ピカード艦長の恋愛感情というのも、TNGの「ピカード物語」においては重要なポイントだ

シリーズ全体におけるピカードのステディーな相手としては、
部下であり、また古い友人でもある医療部長のビバリー・クラッシャーだ

彼女の息子であるウェスリーに対しては「自分が死なせてしまった部下の忘れ形見」として
ピカードは父親代わり的な立ち場でもある


ピカードとビバリー1 投稿者 maneel-katal

彼女との「恋愛感情に極めて近い友情」は、
「上官と部下」という立場、そしてビバリーの夫を指揮下で死なせてしまった
「悲しい過去」とがこのTNGを通じてずっと2人の関係を踏み留まらせた結果だ


ピカードとビバリー2 投稿者 maneel-katal

第065話 「大いなるホリディ」では、彼の考古学的探求心と冒険心が
ひとりの女性をピカードに引き寄せる


ピカードの考古学的な探求への情熱 投稿者 maneel-katal


日常の厳めしく気むずかしいピカードには、
その考古学的な骨董趣味は単純に「老人的でお似合い」に周囲には見えるけれど
その背後には、実はとんでもない「前世的な記憶」が関与していることが
第123話 「超時空惑星カターン」で描かれている

千年も前に打ち上げられた「カターン」の探査機が指揮を執るピカードを自動的に捉え
ピカードはそのまま千年前の前世?の記憶に放り込まれる(いわゆるタイム・リープ)


トランス状態に陥るピカード 投稿者 maneel-katal

その昏睡状態の二十数分で
ピカードは千年前に滅びゆくカターンの「星の記憶」を体験し
(思い出し) そしてエンタープライズに帰ってくる


過去の記憶から帰還するピカード 投稿者 maneel-katal

「千年後の〝星の語り部〟としての自分」を見つける為の探査機とは
まさしく「考古学的な夢」へ情熱を傾ける〝現在の〟ピカードの
具現化した姿そのものだった

「千年前のその時」の最愛の家族達は言う
「あなたが覚えてくれていれば、貴方の中で私たちは生き続けられる・・・」

恋愛感情における情熱とは、一見〝性的な欲望〟だが
実際には愛する者達を〝記憶の中で存続させ続ける〟ための情熱だ

その「物的な証拠品」としてTNGでは〝笛〟が選ばれている
それはピカードの記憶のなかの「懐かしいメロディー」によって再現される


懐かしい調べ・・・新しいロマンス 投稿者 maneel-katal


〝笛〟とは〝空(くう)〟の象徴だ

この〝空〟の長い長い旅の記憶こそがピカードに新しいロマンスをもたらす
空とは単なる「空っぽ」なのではなく、「響く」ことで
人のロマンや感情の語り部になるのだ

人はなぜ人を好きになるのか?

もしそこに
「経済」とか「権威、権力」とか
「ルックスの美しさ」とか「結婚」とか「性欲」とか・・・

  そこに何か「動機」が存在していると、それを〝空(くう)なる状態〟とは呼び難い

しかし表向きは、そういった〝理由〟とか〝動機〟がキッカケかも知れないが
         それらはあくまで〝外見(みてくれ)〟に過ぎないのかも知れない

     そこにばかり目を奪われ、突っつき回していると、
     その内面に〝太古からの響き〟〝懐かしい調べ〟が
     ひっそりと流れていることを見落としてしまうかも知れない

ではその〝中心〟には、いったい何があるのか?
                 ・・・・答えは〝空〟だ、

   万人がわかり合える可能性がある唯一の「何か」といえば、
   それは
   考古学について、でなければ、音楽についてでもない
   「あれ」についてでも「これ」についてでもない
    〝空〟が全存在の唯一の共通のキーワードだ

    しかし〝空〟とは単に「何も無い」ことを意味するのではなく、
    例えるならば「一本の笛がある」

    自覚がなくても全存在がすでに「空を響かせる楽器だ」という意味で仏性を宿す

         それがどんな姿形をしているのか?
         それが如何なる動機(きっかけ)で始まっているかに
          わたしはいままで気を取られすぎていたのかも知れない

「心に響く太古からのロマンの誘惑」と
「千人以上のクルーを乗せた船の船長としての重責」
 との間で引き裂かれるピカードの心が、私には他人事には見えない

それは「内面的、主観的情熱」と「外面的、客観的立場」とを両立させる難しさで
この葛藤はきっと誰にでもあるのでは無いだろうか?

ピカードの様に自分の一挙手一投足に関与してくる他人の運命が多ければ多い、
責任のある立場程、「私情に溺れる」事は許されなくなる

「ギャラクシーロマンス Lessons」では、
珍しくピカードは恋に浮かれる自分を隠さない
・・・カウンセラー・トロイに「公認」を求める程だ

船の最高権力者の恋に誰も文句は言わないのだが、
結局のところ当人同士が苦しい状況に陥る

ピカードは「カターンの思い出」を胸の内に秘めるのみならず
その思い出を共有した女性との甘い関係さえをも断念せざるを得なくなる

ピカードの場合、艦長としての権限と責任は誰の目にも明白だが
でも本当は誰の思い出の中にも沢山の人達が生きていて
それらの人々と個人とは、相互依存の関係にある

そういう意味では誰もがピカードと同じ立場だ

2017-07-09