35.Mastery of Moods
   ムードの習得
 幸せであろうと、不幸であろうと、
 「これもまた過ぎ去る」と覚えておきましょう。
 この鍵が、あなたをムードの犠牲者ではなく、
 自分のムードの支配者にしてくれます。


 多くの賢者たちを擁していた王が自分の富に不満を感じた。
しかも近くの国、彼の国よりも力の強い国が攻撃の準備をしていた。

王は死を、敗北、絶望、寄る年波を恐れていた。
そこで、彼は自分の賢者たちを呼んで言った。

「なぜだかはわからないが、
私はある指輪を捜さなければならない……

それは、不幸なときには私を楽しませてくれると同時に、
もし幸せなときに見たら、悲しませてくれるという指輪だ」


 彼は鍵を、ふたつの扉を開くことのできる鍵を求めていた
   幸福の扉と不幸の扉。
   
   彼はなにを求めていたのだろう? 
   
   彼は自分のムードの習得を求めていた。
   自分のムードの主人になりたいと言っていた
   彼はもはやそれらの犠牲者になるのを望んでいない。

 賢者たちは相談しあったが、どのような結論も見い出せなかった。
ついに彼らはスーフィー神秘家のところに言って助言を求めた。
スーフィーは自分の指から指輪を外し、それを彼らに与えて言った。

「ひとつ条件がある。
それを王に与えるがいい。だが、彼に伝えることだ。
すべてが失われ、混乱の極みに達して、苦悩の極みに達して、
まったく望みがなくなったときにしかその石の裏側を見てはならない。
さもなければ、彼はメッセージを逃す」

 王は従った。国は失われ、自分の命を救うただそれだけのために、
彼は王国から逃げ出した。
敵が迫っていた。彼は騎馬の音を聞くことができた…‥・。
しかも馬は死んでしまい、彼は自分の足で走った……
彼は窮地に陥った。底の知れない深淵しかなかった。

 最後の瞬間になって、彼は指輪を思い出した。
彼はそれを開けた。石の裏側を見ると、
そこにメッセージがあった。そこには

    --これもまた過ぎ去る--

               とあった。

王はその後、奇跡的に窮地を脱した。
そして味方の軍は脅威の逆転勝利を勝ち取り、王の手に国は戻った。

国中が沸き返る勝利の祝賀の中、王は再びあの指を思い出し、
ひとり席を立つと、そっとあの指輪を取り出し、あのメッセージを再び見た。

    --これもまた過ぎ去る-- 


そうして王は、浮き立つ心を静め、祝賀の席に戻っていった。



                  UNTIL YOUl DIE.pp.192-204