いま、夢を見た

潮騒の香りが漂う街だった、海が近いのだろう

わたしは初恋の人の働いている文房具店だか、駄菓子屋のような店を尋ねる
わたし自身の連絡先をメモした紙をポケットの中に準備して・・・

店内をうろついたのだけれど、それらしい懐かしの人は見当たらず、
私はもう帰ろうかと思った・・・  その矢先、年老いた彼女はいきなり面前に現れた

     私の姿を驚きながら、・・・とても嬉しそうに、懐かしそうに見つめてくれた

わたしも嬉しく見つめ返し、お互いは無言だった
わたしは無言のまま彼女にメモを渡し、とうとう一言も交わさずそのまま店を去った

彼女は見たところとても幸せそうに過ごしていたからだ

そして、その街を去る前に食事を済ませようと定食屋のような処に立ち寄る
店内から良く晴れたおもてを眺めながら食事が出て来るのを待っていたら
突然風景が大きく揺れはじめた ・・・地震のようだった

定食屋の亭主は、「おや、揺れてますね」と言いたげに厨房から私の方を見る
・・・その揺れの中で、ふいにわたしは悲しみに襲われた

地震を感じても、何も感じなかったからだ
もしこのまま死んでも、人生に何の感想も残らないな、と気が付いたからだ

彼女に連絡先を渡しはしたが、だからといって何を期待していたわけでは無かった
せいぜい思い出話をするかな?という程度だった

初恋の淡い思い出すら、一握りの乾いた砂のように感じている自分を感じていた
それが悲しかったのだ