49.Love
   愛
 自分の愛を貯め込んだり、計算したりしないように覚えておきましょう。
けち臭くなってはいけません。あなたはなにもかも逃してしまうでしょう。
その代わりに、あなたの愛を咲かせて、それを分かち合いましょう。
それを与えて、育てましょう。

 ある偉大な王に三人の息子がいて、彼はひとりを
自分の後継者に選びたかった。

ところが、それは非常にむずかしかった。

というのも、三人ともみな非常に賢くて、とても勇敢だったからだ。
しかも彼らは三つ子だった--みな同じ歳だ--だから判断しようが
なかった。

そこで、彼は偉大な聖者にたずねた。
聖者は彼にある考えを提案した。
 王は家に帰って、三人の息子たちみんなを呼び寄せた。
そこで彼は、花の種の入った袋をひとつずつ彼らに与え、
自分は宗教的な巡礼に行くつもりだと告げた。

「数年はかかるだろう。一年、二年、三年、もっとかもしれない。
それに、これはお前たちへのある種のテストだ。私が戻ったら、
この種をお前たちは私に返さなければならない。そして、誰であれ
それをもっともよく守ったものが私の後継者になる」。

そして彼は巡礼に出て行った。


 最初の息子は考えた。「この種をどうしたらよいだろう?」。
彼はそれを鉄の金庫に入れて鍵をかけた--父親が帰ってきたら、
それをそのまま返さなければならなかったからだ。

 二番目の息子は考えた。
 「兄がやったように閉じ込めてしまったら、種は死んでしまうだろう。
  死んだ種はまるで種ではない」

そこで彼は市場に行ってその種を売り、金を取っておいた。
そして彼は考えた。

 「父が帰ってきたら、私は市場に行こう。
 新しい種を買って、それを父に返そう。最初のよりは良い」

だが、三番目の息子は庭園に入ってゆき、あたり一面に種を蒔いた。


 三年たって、父親が戻ってくると、
 
最初の息子は金庫を開けた。種はすべて死んでいた、臭いを放っていた。
そこで父親は行った。

「どういうことだ!私がお前に与えた種がこれなのか?
 それらは花となって咲いて、すばらしい薫りを与えることもできたのだ

      --それなのに、この種は悪臭を放っているではないか!
                     これは私の種ではない!」
 
 息子はそれは同じ種だと言い張った。が、父親は言った。

 「お前は物質主義者だ」
 
 二番目の息子は市場に駆けつけた。種を買い求めて家に帰り、
 それを父親に贈った。父親は言った。

 「だが、これは同じものではない。お前の考えは最初のよりは良かった。
  だが、お前はまだ、私がお前にそうあって欲しいと望んでいるのには
  かなっていない。お前は心理学者だ」


 彼は三番目の息子のところに行った
       --大きな期待と、恐れをも抱いて--
              「彼はなにをやったのだろう?」と。

三番目の息子が彼を庭園に連れてゆくと、何百万もの花があった。
そして、その息子は言った。

   「これがあなたが私にくださった種です。
     時機が来たらすぐに私は穂を集めて、あなたにお返しします」


 父親は言った。

 「お前が私の後継者だ。それこそ人が種に対してなすべきことだ」


 貯め込む人は生を理解しない。
 そして計算だかいマインドもそれを逃す。

創造的なマインドしかそれを理解できない。
それが花の美しさだ--彼らを貯めることはできない。

        彼らは神を代表する。神を貯めることはできない。
        彼らは愛を代表する。愛を貯めることはできない。

 何代にもわたって、あらゆる国で、あらゆる種類の社会で、
 花が愛のシンボルでありつづけたのは偶然ではない。
 愛は花のようだ--それがあなたのなかで咲き始めると、
 あなたはそれを分かち合わなければならない。
 あなたは与えなければならない。
 
 そして、与えれば与えるほど、愛はそれだけ成長する。
 もしあなたが与えつづけたら、あなたが愛の絶えることのない
 無限の源になる日が来る。



      ZEN:THE PATH OF PARADOX,Vol.2,pp.43-45